各米国経済指標発表後のドル円とSP500の変動

別にブログにするほどでもなかったのですが最近書いてなかったので

 

2020年1月以降の米国の各経済指標の結果と、ドル円、SP500の1min足を取得し、指標発表後の時間推移と価格変動の関係を調べてみたので備忘録として置いておきます。調べようと思ったきっかけは、最近Podcastで「この仕事で一番大事なルールはNFPの日は絶対会社に来ることだ」というのを聞いたので、NFPってどれぐらい大事なんだろな?と気になったことです。

 

注意としては、例えばJOLTSとISMは同時に発表されることもあるので影響の切り分けを行うべきなんですがそこまではやっておりません。

 

ドル円

まずこちらはT+5min時点での値動きの中央値。NFP、FOMC、CPIの3つが圧倒的に強く、早速NFPが如何に重要かが一目瞭然な結果に。しかし中央値ベースで30pipsにも届かないのは自分としてはやや意外で、50pipsぐらいかなと集計を取る前は予想していた。

 

FOMCは今までパウエルが丁寧な織り込みをしてきたお陰でこの程度になっているが、ウォーシュさんはフォワードガイダンスを出さない分これからはもっと動く可能性が高い。

 

PCEはFedが重視すると明言している割には動かない。PCEはCPIよりも遅い(CPIのデータを元に算出しているし)ので、市場にとっての情報価値が少ないからかなと考察。

 

T+60minまで並べるとこんな感じ。やはり上位三役が圧倒的で、その下の群衆から小売売上高が一個頭抜けているという感じ。

 

続いて発表T+5min時点での各経済指標に対する値動きを箱ひげ図にしたもの。正の歪みがあるのは計測期間のかなりの部分が円安トレンドで、22年以降は強いドルに対してとりあえず円を売っておこうみたいなノリが結構あったからだと思います。

 

同じくT+5minの中央値と平均値の比較。こうしてみるとNFP、FOMC、CPIの三役が中央値に対して平均が上振れしておりfat-tail的。

SP500

SP500に対して上と同じ分析をしてみた。上位三役は同じだが、織り込み済みのはずのFOMCで一番大きく動いている。続いてCPI、NFPと続く。近しい値なので無理に解釈することもないと思う。

それよりもPPI、建設支出(construction spending)で動くのが面白い。大企業はto B取引が多いため、PPIが影響力のあるデータとして重視されており、建設支出もゼネコンから家具耐久財の受注などにも繋がるデータなので為替より株に効いてくると推測。ミシガン大の消費者信頼感指数、GDPが次点で入ってくるのも面白い。逆に小売がJOLTSよりも下に来るのが解せない、、、ドル円との差異を見ると集計取る前に想像してたより面白い結果である。

 

こちらもT+60minまで見ると上位三役が大きく変動し、他はドングリの背比べといったところ。FOMCがT+30から加速するのは会見のせいであろう。

 

株もずっと強い期間だったので正の歪みあり。

 

CPIだけfat-tail的だが、先ほど乖離してたFOMC、NFPも大体median~meanの線に乗ってくるようになっている。

リーマン後のCIP deviationとドルベーシスについて

(正直あんまり分かってないので、覚書程度です)

通貨ベーシススワップでは、例えばドル円の場合TONAを受けてSOFR - x bpsを払う、というような取り組みがなされるわけですが、どうもリーマン以降このドルベーシスが消えずにαとして残り続けているらしい。

 

別の話として、リーマン後は金利平価が効かなくなったという話も聞いた。例えばドル円でカバード金利平価(CIP)が崩れていれば、

円で調達 → FXスワップでドル化 → ドルで運用

みたいな取引を誰かがやるので、結局理論値に戻るはずなのだが、リーマンショック以降ずっとドル円のベーシスはゼロに戻っていないらしい。

 

両方不思議な感じがするが考えていると何となく繋がっているような気がしてきた。

 

これは市場が非効率というより、裁定そのものにコストが掛かるようになったのでは?という話なのではないだろうか。

リーマン後は各種規制によって銀行のバランスシートが貴重な資源になった。昔なら抜ける鞘は全部抜かれていたのが、今では「その10bp、本当にBSコストに見合うの?」となる。

つまりリーマン後は「裁定資本が有限になった」という事実があるのではないか。流動性の供給者・市場の裁定者としての役回りを担ってきた銀行が各種規制を受けてその役目を放棄した結果、「みんなが嫌がる資金調達リスクや流動性リスクを引き受けた対価」が貰えるようになったんじゃないか?

 

そう考えたら納得感があるのかな、というお話。浅い理解なので間違ってたらつっこんでもらえると助かります。

読んだ本まとめ(2026年5月)

◆福音派

今のイラン情勢は実はほぼ宗教戦争なのではないか?と思ったので買って読みましたがあたりでした。

かなりハッとさせられる内容である。というのも、アメリカは多様な価値観を認める自由の国だというステレオタイプが自分の中にもずっとあったのだが、むしろ戦中戦以降は福音派抜きには語れないアラブ国家も顔負けのゴリゴリの宗教国家であるという風に認識が改めさせられたからだ。

エマニュエル・トッドはアメリカが今や「宗教ゼロのゾンビ状態にある」と指摘していたがそれはどうだろうか?確かにプロテスタント人口は減っているが、小さな政府を歴史的に標榜する国において、公助が望めない人間が縋る場所と言えばやはり教会であり、そこを起点に信仰が維持され続け、政治に大きな影響を持ち続けるのではないだろうか。実際、信者数はここ数年下げ止まっているらしい。

アメリカに限らず、世界中でコミュニティが二極化する現象が起きていて、福音派がMAGAを取り込んで米国の政治経済をめちゃくちゃにしているのは一つの例でしかなく、別に日本も当たり前に他人事じゃないなと再認識させられた。

 

◆1ドル50円で日本経済が変わる!

Bookoffで110円ぐらいだったのと、別のここには書けない理由で読みました。あとシンプルに全員が円安目線の時に円高時代の更なる円高予想の本は何を書いているのか?も気になったので。

書かれた当初2009年はドル円が90円より上ぐらいで、その後2011年の震災にかけて75円まで下げたので、中期的な目線としては合っていたと評価できそう。長期的なドルの影響力低下を見越していてそれは2012ぐらいから始まるとしていたが、これは米中の貿易対立とコロナ後のインフレ相場を待たなくてはならず、期間としては外している。また、ドルが根本的に崩壊する、というような主張もやや強すぎた。

面白かった点としては、為替動向を景気循環理論とエリオット波動を用いて予想しようとしていること。どちらも解釈する人間の恣意性が強く出る手法なので、こんな曖昧な手法でここまで堂々と言い切っていいのか!という姿勢に驚いた。経済循環を用いて考えることには以前から興味があったのでそこは勉強になった。

良くなかった点としては、3章以降は読む価値が無かった。2章までは(ある程度)まともな経済予測の話だが、3章以降は予測をしているのか?政策提言をしているのか?筆者の酔いどれトークに付き合わされてるのか?全く分からない内容であった。

「こうなると予想する」と書きながらそこにはこうなって欲しいという筆者の願望や日本政府はこうするべきだという提言が混ざっていて、ハッキリ言って見るに堪えないものだった。この本が110円とは、Bookoffの値付けは毎度絶妙で感心させられる。

 

◆色彩のない多崎つくると、彼の巡礼の年

 

中2の修学旅行で京都奈良に行ったときに某国立医学部に行った仲良しのHくんが読んでいて妙に印象に残っていたから読みました。Bookoffで242円以下の本が一冊無料になるクーポンを配っていて、それが欲しくなったという邪な理由もあります。

 

今まで村上春樹って無駄な描写が多くて好きじゃないなと思ってたけど、読書に浸れる人ってそういうのが好きなんだろうなと理解できた一冊でもあるし、今後村上春樹のファンになりそうだなと直感した。

話の内容は今の個人的な感傷に凄くマッチした内容だったのも大きいと思う。イマジネーションの世界が写実的に書かれていて、現実の境界線が溶けていくような描写が使われているが(村上春樹全体の蛍光かも?)、しかしあまねく人間関係に普遍的に現れる緊張感や諍い、すれ違いを核に捉えていて、人との関わり方を学べる本である、と自分はそういう風に読んだ。

読んだ本まとめ(2026年3・4月)

 

◆西洋の敗北

巷で有名な本。自分の新しいバイブルになりそう。

西洋、とりわけ米国はウクライナ戦争で既に「敗北」しているとして、どうしてGDPで大きく劣るロシアに対して負けたのか?そもそもGDPという指標の不完全さやプロテスタンティズムを喪失した米国社会の脆弱さから説明していて目からうろこ

トッド自身日本についての造詣が深く、直系家族主義におけるリーダーを務めることが如何に苦痛であるかや、ドイツと似通ったこの家族構造が政治的な悲劇をもたらすメカニズムについて語っていて面白かった。

トッドは冷戦終結や金融危機などについても多くの予言を残しているが、これからの西側社会の行く末を占う一冊になりそう

 

◆最強の経営者

戦後シェアが9.6%にまで低下していたアサヒビールを再生させた元住友銀行頭取の樋口さんについての話。基本樋口さんSUGEEEEみたいなノリであり、またセリフ文も丁寧に追わないと誰がどこを話してるのか分かりづらく独特の癖がある。うーん。

 

◆生命保険のカラクリ

ライフネット生命の副社長が書いた本。生命保険ってそもそもどういう仕組みなの?から、米国と比べた時の日本の生命保険の非効率さとそれを生み出した元凶、バブル崩壊後に生命保険会社が苦しんだ理由とか、生命保険の選び方まで網羅的に書かれてて大変勉強になる一冊だった。
Bookoffで入荷通知をしてたんですが通知後15分ぐらいで見たらもう売り切れてる、みたいな状況が続いたため諦めてメルカリで買ったぐらいなので入手は少し困難カモ?

【競馬】LightGBMによるファンダメンタルズベースの着順予測モデルの構築

競馬の予測において、単勝オッズが持つ情報量は非常に強力です。以前の記事で示した通り、確定オッズの疑似R²は約0.21に達し、市場参加者全員の知恵を集めた数字はそれだけで強力な予測器になります。

ではファンダメンタルズ情報、つまりオッズを一切使わずに馬・騎手・調教師・過去成績のデータだけで、どこまで確定オッズの情報量に迫れるのか。

今回はそれを機械学習で実験した途中経過を報告します。

(※コードの実装はClaudeに大部分を投げていますが、設計方針・特徴量選定・結果の解釈は自分で行っています。)

 

 


1. フレームワーク

モデルの出力を確率に変換する方法として、soft-max関数を採用しました。レース内の全馬に対してモデルがスコアを出力し、それをsoft-maxで正規化することで勝率に相当する確率を得ます。

P(iが勝つ)=exp⁡(si)∑jexp⁡(sj)P(i \text{が勝つ}) = \frac{\exp(s_i)}{\sum_{j} \exp(s_j)}

これは多項ロジットモデルと同じ構造で、Benterが競馬予測に採用した枠組みそのものです。

評価指標は以前と同様のBenter流疑似R²を使います。

Pseudo-R2=1−L(Θ^)L(Θ=0)\text{Pseudo-}R^2 = 1 - \frac{L(\hat{\Theta})}{L(\Theta=0)}

ここで L(Θ^)L(\hat{\Theta}) はモデルの対数尤度、L(Θ=0)L(\Theta=0) は全頭均等確率(1/N)のベースライン対数尤度です。

学習アルゴリズムにはLightGBMのlambdarankを採用しました。lambdarankはレース内の馬同士の順位関係を直接最適化するランキング損失で、ソフトマックスによる確率変換との相性が良いです。

教師ラベルは1着に4、2着に2、3着に1、それ以外に0を割り当てています。1着を特別に重視した非線形な重み付けです。

 

 


2. データ

TARGETから取得した2018〜2025年のJRA全レースデータを使用しています。

区分 年度 用途
バッファ 2018〜2019 前走特徴量の計算に使用、学習には含めない
学習 2020〜2023 約11,900レース
検証 2024 約2,977レース
テスト 2025 (未使用)

なお、異常コード(取消・失格等)が含まれるレースはまるごと除外しています。また、データが1着順に並んでいるためソート順のリークを防ぐ目的で、レース内の行を馬番順に並び替えてから学習しています。

 

 


3. 特徴量

投入した特徴量を大きく4つに分類します。

3-1. 馬自身の情報(今走)

  • 馬体重・馬体重増減・生後日数・キャリア(Z正規化も追加)
  • 斤量体重比・馬齢斤量差
  • 距離・ラウンド
  • 充足率(出走頭数 / フルゲート頭数)
  • 芝ダート・天気・性別・所属のone-hot

3-2. 生涯累計賞金

馬ごとに、当該レース以前の獲得賞金を累計した値です。強い馬ほど賞金を稼いでいるという情報を反映します。リーク防止のため当該レース分は含めません。

3-3. 騎手・調教師スコア

騎手・調教師それぞれについて、過去50戦の平均ラベル(1着×4、2着×2、3着×1の平均)を計算したものです。さらに、クラスコード(未勝利=7からG1=195まで)と掛け合わせた加重スコアも追加しています。G1で勝った騎手と未勝利戦で勝った騎手の評価を差別化する意図があります。

これも当該レース以前のデータのみで計算しています。

3-4. 前走特徴量(前1〜5走)

前走データは血統登録番号で馬を識別し、日付順にshift(1)〜shift(5)で取得しています。前走ごとに12種類の特徴量を生成しました。

特徴量 内容
着差 そのままの値
人気超過率 (人気 − 着順) / 頭数。期待を上回ったかの指標
クラス差 今走クラスコード − 前走クラスコード
相対順位 (頭数+1−着順) / 頭数。1位=1.0、最下位≒0
タイム偏差 走破タイム − 基準タイム(秒換算)。コース補正後の速さ
上り3F そのままの値
距離差 今走距離 − 前走距離
間隔 前走からの日数
PCI−50 PCIから50を引いたもの
PCI3−50 PCI3から50を引いたもの
RPCI−50 RPCIから50を引いたもの
PCI−RPCI差 個馬とレース全体のペース乖離

加えて、過去5走の平均距離と今走距離の差(過去5走平均距離差)を別途計算して追加しています。

 

 


4. 結果

2024年の検証データ(2,977レース)で評価した疑似R²は以下の通りです。

Pseudo-R2=0.1403\text{Pseudo-}R^2 = 0.1403

確定オッズの0.21に対して、ファンダメンタルズ情報だけで0.14という結果です。

Feature importanceのTOP10は以下です。

順位 特徴量 importance
1 前1走_タイム偏差 18,960
2 前1走_相対順位 18,673
3 騎手スコア 12,395
4 前1走_人気超過率 9,372
5 前1走_クラス差 4,577
6 騎手加重スコア 3,747
7 前2走_相対順位 3,644
8 前2走_タイム偏差 3,348
9 前1走_着差 2,244
10 前1走_間隔 2,233

前走タイム偏差と前走相対順位が1・2位を占めており、「前走でどれだけ速く走ったか」と「前走で頭数の中でどれだけ上位に来たか」が最も予測力の高い情報であることが分かります。騎手スコアが3位に入っているのも、騎手の腕がそれだけ着順に影響していることを示していて興味深いです。

 

 


5. 考察

0.14という数字をどう評価するかですが、確定オッズ(0.21)との差0.07が残っている以上、市場にはまだファンダメンタルズで説明できない情報が乗っていることになります。

一方で、市場の情報を一切使わずに0.14を出せているということは、ファンダメンタルズモデルと市場確率を組み合わせることで期待値プラスの馬券を探せる余地があるという示唆でもあります。これはBenterの戦略の核心です。

現状、血統情報や同コース・同距離での過去成績などをまだ特徴量に含んでいないため、さらなる改善の余地はあります。また今回は前走5走分のデータを使いましたが、6〜10走分に広げても精度が上がらないことも確認しており、直近5走が情報の実質的な上限であることが分かりました。

次のステップとしては、ファンダメンタルズモデルの確率と市場確率の乖離からベッティングシステムに繋げることを考えています。