スワップについてのまとめ

スワップ(swap)をよく理解してなかったので自分用にまとめる

スワップの概要

デリバティブ取引の一種で、予め定めた条件に基づき将来の一定期間にわたりキャッシュフローを交換(swap)する取引のこと。特に代表的なものとして通貨スワップ金利スワップがある

 

通貨スワップ・クーポンスワップ

世界最初のスワップ取引は1981年に世界銀行IBMが行った今は亡きソロモンブラザーズを仲介とした通貨スワップである。

当時IBMは米国市場から十分なドルを得られなかったため、欧州市場からフランやマルクを調達しドルへ転換していた。一方世界銀行はフランやマルクを低金利で調達したいと思っていたが、当時既に多額のCHF建ての世銀債を発行していたため、一部をドルで調達しフラン・マルクへ転換していた。ここにフラン・マルクを潤沢に持つがドル需要の大きいIBMと、ドル調達が容易に出来るがフラン需要の大きい世界銀行という構図が生じた。

そこで、世界銀行IBMの債務CFと完全に一致するユーロドル債(ユーロ市場で発行されるドル建て債)を発行し、お互いの元金と利息の債務を交換することで、あたかもIBMはドルでの借り入れ、世界銀行はフランで借り入れたという状況が出来上がった。

この取引のメリットは3つある。

①お互いに調達しやすい市場から通貨を得、その後交換することで調達難易度が下がった

スワップ取引によって将来のCFを確定させたため為替リスクを回避できた

IBM金利10%のマルク債を8.15%のドル債にスワップし、世界銀行も16%のドル債を10.13%のマルク債にスワップ出来たため、両者とも資本コストを下げることが出来た

 

元本と金利を両方スワップするのを通貨スワップと呼ぶのに対して、通貨スワップのうち金利部分だけをスワップするものをクーポンスワップという。

 

金利スワップ

同一通貨について異なる金利の債務間の交換を指す。よく見られるのは固定金利と変動金利スワップである。金利スワップは少し遅れて1982年に初めて登場した。このような取引が生じるのは、変動金利で支払いたいのに固定金利債務を組まされてしまった会社と逆の会社が存在する場合などが考えられる。

A社はより割安な変動金利で資金を調達したいと考えたが固定金利を設定されており、反対にB社は割高でも構わないのでCFの安定性等を維持したいが為に将来の支払金利を確定できる固定金利を望んでいる(が実際には変動金利に設定されてしまった場合)などが例として挙げられる。

また別の例として将来の金利に関する見通しが異なる場合もあり得る。二人のプレーヤーのうち片方はこれから先の金利上昇を見込んでいるため現在保有している変動金利債務を固定金利にするのが得と考え、もう片方は金利低下を見込んでいるため高い固定金利で債務を他者に押し付けることが出来れば利益になると考えている場合。(ちょうど今の日本のようにインフレの先行きが見えない場合、このような状況は珍しくないと思われる。) 変動金利同士のスワップベーシススワップという

 

エクイティ・スワップ

株価などに連動したリターンと金利スワップ

ある投資家はこれから先株価の下落を見込み、それを回避して安全資産に乗り換えたいと考えているとする。先物を使ってヘッジしたりそもそも売却してしまうなど色々方法はあるが、前者はその投資家のリターンと日経先物の動きにトラッキングエラーが生じる可能性が高く、後者は例えばポジショニングの優位性を放棄することが憚られる(200円で買った株が2000円になっている時に一度売って再び2000円付近で買いなおすのは心理的に難しい)等々の理由で出来ない場合は、一定期間における株価から得られるキャッシュフローを譲渡する代わりに金利分(TIBOR+スプレッド分など)を得る、という契約を結ぶことで、実際に株式を売却せずともその期間の株価変動だけを回避することが出来る。

名前が似ているものとしてデッド・エクイティスワップ(DES)がある。これは企業再生の手法の一つで、債権者に債権を現物出資させ(=債務放棄させ)代わりに株式を与えることで企業の債務状況が改善する効果が見込める。また、債権者の同意の上で債務企業が増資を行い、その増資分で債権者への返済を行うことで、企業は債務が減少した一方、債権者は債権を手放すと同時に株式を得るという上記と同じ状況を作り出す手法を疑似DESという。

 

CDS(クレジットデフォルトスワップ)

名前とは裏腹にスワップでもなんでもない。ある投資家はある国家に対して100億円の債権を保有するがその国のクレジットリスクを背負いたくない。この場合、この投資家は証券会社とCDS契約を結び、一定期間にわたって定期的な金銭の払い込みを行う一方、同期間において国家がデフォルトなどのクレジットイベントが発生した場合に予め合意した内容に従って証券会社が投資家に"保険料"を支払う。この場合投資家をプロテクションの買い手、証券会社をプロテクションの売り手と呼ぶ。

一般的な「保険」ではないのでスワップの名前が付けられているが実質的な保険と考えると理解しやすい。

銀行の自己資本比率向上のために使われることも多いらしい。

 

不明点:スワップは市場構造の不完全性、例えば信用力や海外企業であること、借入期間や金利が固定か変動かなどに対する裁定取引の一種であるとまとめられると思った。金融自由化がどんどん進み市場が不可逆的に効率的な方向へ変動する現在においてこのような交換しただけで有利になる裁定の機会は減ってしかるべきだと思うのだが、実際には増加傾向にあるのは何故だろう?(勿論CDSのような新たな投機対象となるものもあるが)