個別銘柄研究シリーズNo.03~松尾電機~

6969 松尾電機

kabutan.jp

PER12, PBR0.7, 配当なし, 時価総額17億

株価は現在516円、バブル期には5桁に乗せていた株価も90年をピークに波打ちながら下落し、08年より1000円前後のレンジに、基本的に下落基調

 

【歴史】

1949年設立の大阪府の会社。かつてはAV事業も手掛けていたが現在はコンデンサ等電気素子に注力。74年に阪証2部に上場。12年にはタンタルコンデンサJAXA認定品として採用される。13年に東証2部上場。20年には流通株式時価総額が10億に満たないという点で上場廃止も見込まれていたことがある。現在東証スタンダード市場。台湾Walsinグループ傘下の釜屋電機が26%の株式を保有

 

【決算推移】

P/L:かぶたんで確認できる範囲では2000年以降売り上げは継続して減少傾向。営業益、EPSも5年に4年はマイナスという有様だが、営業益は18年から安定して黒字となり始め、EPSも昨年より2期連続プラス見込み。黒字が定着化してきた理由は有報によると生産地の集約化らしいのだが、要するに売り上げの減少に合わせて不採算工場を閉鎖していったということか。

B/S:かつて80%近かった自己資本比率は現在30%ちょいで推移。15年から利益剰余金もマイナス継続である。財務状況の悪化とともにBSの縮小が続いているが底打ちした感もある。

 

【事業内容】

タンタルコンデンサと回路保護素子の製造販売が売り上げを3:1で構成している。回路保護素子は通常時は作動しないものの回路に強い電圧が加えられた時にバーストしないよう保護する目的で取り付けられる部品。過電圧印可を防ぐはたらきがある。タンタルコンデンサJAXAにも納品されている。両方とも自動車向けが主力で、6920デンソー向けが売り上げの3割以上を占める。他にはフィルムコンデンサ(誘電体の材料として天然高分子を利用したコンデンサ)なども製造。

 

【着目した理由】

大きく2つある。一つはここ数日5595QPSや9348ispaceが宇宙関連の連想でガンガン買われているので隠れた宇宙銘柄を探そうと思ったこと。もう一つは、24年1月16日に「自動運転用の車向けの需要拡大に乗って回路保護素子を伸ばし、現在売上高42億最終益1.4億のところを27年には売上高60億最終益8億、そして更に今後10年で売り上げ100億を目指す」、という旨の強気な中期経営計画を発表したこと。

https://www.ncc-matsuo.co.jp/wp-content/uploads/2024/01/ir240116s.pdf

 

【今後の見通し】

現状ダメダメな会社ではあるのだが、だからこそ醍醐味はあると思う。上場廃止スレスレではあるものの全体的に底打ちした感じもする。

事業内容が全体的に村田製作所と被っている。下のリンクからJAXAの宇宙用部品の認定品とそのメーカーを確認できるのだが、採用されている17種のコンデンサーのうち1種のみがこの松尾電機のものであった。JAXAのロケットが上がるたびに売り上げがちょっとは増えるはずなのだが、打ち上げ頻度もそんなに高くないし、使う部品の数もたかが知れているので然程売り上げに貢献するとは思えない(あくまで印象論でしかない)

宇宙用部品データベース/認定部品一覧

IRさんに電話してJAXAがどれほど売り上げに貢献してるかを尋ねたのだが教えてもらえなかった。(それはそう)高齢の女性だったのだが投資家からの電話に慣れているように感じた。規模の小さい会社なのでこちらの質問についてこれるかなと正直内心舐めてかかっていたが、とても老獪な印象を受け、むしろこちらが丸め込まれてしまった。会社規模が大きかった頃を知っているからなのかもしれない。

このIR部門について一つ文句を言いたい。1月にあれだけ強気な中経を出しておきながら、2月9日の決算で当期利益予想を3.7億から1.4億に大幅に引き下げたのは人間のすることなのだろうか?(注意のために言っておくと別に自分は買っていない)チャートは次のように推移した。

関係者が売り抜けるために出したIR、と邪推することも出来るが、1%以上売買したら大量保有報告書を出さなきゃいけないし、たった時価総額10億程度の会社でそんな手の込んだことをやっても高々2000万程度の利益が出るかどうかで、これは考えづらいと思う。IRを出すタイミング自体は酷過ぎたと思うが、あまり悪く考える必要もないのかな。IRさんに理由を尋ねようと思ったのだが大人なので聞かなかった。

Twitterで少し調べてみたら宇宙関連やら電気自動車関連で来るという声も見られたが(インフルエンサーに煽られて上がるような値動きを除けば)まずないだろう。

 

▲48%の下方修正決算の1か月前というふざけたタイミングでの中期経営計画発表というだけで投資する気はなくなるのだが、こういう会社があるという知識を持っておくと跳ねた時に役立つかなと思い、ネットの海に知識を流しておく。